
Podcast 璃寛茶 編
Podcast 「璃寛茶 編」
2021/1/14 「璃寛茶 編」を下記にて録音しています。今回の色名「璃寛茶」。
この色名は、瑠璃色の文字に使われる「璃」と寛容の「寛」、お茶の「茶」と書き、
そして、この色名が付いた由来は、美声で美男の歌舞伎役者の拝名が「璃寛(りかん)」
という名前であった事、その時の舞台衣装として好んで使っていた色であった事から
付けられた色名。と言うお話しをさせて頂きました。
注:上記の参考画像は、画像モニターによって、色の見方は異なります。
Anchor Podcast 「璃寛茶 編」
https://anchor.fm/mao.archaichic/episodes/ep-eov671/a-a4bllkv
「璃寛茶 編」の色名は、何故?透明性と、上品さを表す「璃(り)」と、寛容という熟語にも
使われる広い心を意味した「寛(かん)」という文字を付けたのでしょうか?と言う問いかけを
させて頂きました。その時に、皆さまは、透明性という言葉から、どんな透明性をイメージ
されましたか?寛容という文字から、どんな人や、モノ、風景を思い浮かべましたか?
透明というと、光であったり、光を反射するクリスタルなどをイメージしやすいと思います。
そうした時に、デザインを考えるのではない場合は、常識的な答えだと思います。ただ、透明
という言葉から、デザイナーは、光=太陽までは、同じようにイメージしますが、ここからは、
少し専門的な知見が入っていきます。前回、「天藍 」の色名でお伝えした時、青空の観れる
原理をお伝えしました。その原理の逆が、夕日や朝日です。
赤く染まった美しい空色は、青空が観える原理と異なり、ちりや微小な水滴の影響による
散乱が少ないため、やさしく、おだやかな太陽の光を映し出します。こうした穏やかな光は、
青空の晴天よりも長く、観れますね。朝日も同じ原理です。太陽光の光が斜めの角度から入って
くる事から、散乱に影響されにくい、長い距離での波長となるためです。
今回の「璃寛茶」と似た色名であり、高貴な方しか着用できない「うえのきぬ」に使われていた
「山鳩色」は、滅多にお逢い出来る方でない事、太陽をイメージされる天皇が着用する上着を
イメージした色名であった多い事からも、晴天のような青空と光をあびた時、「山鳩色」のように、
美しい緑がかった茶色に観える色とは、真逆のあたたかで、穏やかな光=朝日や夕日のような光を、
今回の「璃寛茶」からイメージしました。特に、庶民のあこがれであった歌舞伎役者の方の名前から
付いた色名であるだけに。
日常の中にある、穏やかな光を浴びる事が出来る、日の出や、夕日の光に寛容の文字がとても
マッチしている。そんな気がしたので、庶民がくらす場所にある美しい緑色の風景に、夕日の
光で覆われた景色の画像を選んでみました。
こうしたイメージをお聴きしても面白くない。そんな答え合わせが何の役にたつのか?と
思われた方もいらっしゃるかと思いますが、こうしたイメージのすり合わせは、皆さまに
解りやすいように、風景などに限定していますが、本来は、デザインするアイテムや製品
パッケージ、動画などの映像をセレクトする時などに、とても大事なイメージのすり合わせに
なっていきます。たとえ、デザイナーでなくても、今後は、企業内では、こうした多様な
捉え方を希望して行く時代に入っていきます。その時に大事なのは、よりユーザーに寄り添い
ながら、多様な捉え方をしていく必要があります。そうしたと時に必要なのが、誰もが知って
いる事柄から、新しい捉え方、みせ方を考える事なのでお伝えしています。少しでもご興味が
あれば、読んで下さいね。
そして、以前は、こうした風景画像でのすり合わせに近い、漠然としたイラストや写真などから
デザインイメージを共有し、個々が持ったイメージから、より良いアイデアを出し合い、そこに、
技術者の方のクリエイションが加わる事で、デザイナー1人が起こすデザイン以上の製品が
出来あがっていきました。そうしたデザインの起こし方、また、整え方が上手なのが海外の
ブランドです。
日本は、残念ながら、もう10年以上前から、他者製品のサンプルを参考として観るのではなく、
そのままを、少しアレンジするだけのデザイン以外、創出する事ができなくなっていました。
アパレルでは特に、顕著になっていった残念な傾向でした。
理由は、他社で売れているモノ以外創らない=利益率=エコ=サスティナブルという考え方だったからです。
バブル崩壊後は、どのブランドも売上優先の数値目標を毎朝、朝礼で報告するのが日課でしたが、
それは、それで大事です。ですが、その数値の中にある根本原因や、本当に改善するべき問題点と
異なる論点が多かったのも事実です。
理由は、出来るだけコストがかかる部門を内部で、多様なサービスがある業務は委託という方向性
根本原因を互いに出し合う環境を捨てるという事は、一方通行の学びでしかありません。
数値的結果のみに終始すると、本当は、素材を変更したり、サイズ感や、色展開を変更したり、
上代、販路先、販路時期を変える事で、数値が変わる可能性を簡単に捨てて、短期間での
結果優先となる事で、一段と、どのメーカーでも販売されるレッドオーシャンの製品しか
上がってこない。そんな悪循環では、価格競争になっていくのは必然でした。
そんな企業デザイナーとして、最後に提言させて頂いたコンセプトマップに何度も記載したのが、
「らしさ」でした。もっと、個々のデザイナー、パタンナー、生産管理者、技術者のアイデアを
発散させてあげる事に、経費を使う方が、必ずレッドオーシャンになる参考サンプル購入費よりも、
貴重な財産となる事が多いはず。そんな思いを残して、企業デザイナーの業務を避けるようになりました。
そんな思いにも似た、今回の「璃寛茶」の色名は、どこか、あたたかく、穏やかな色でありながら
憧れの存在であった歌舞伎役者の名前と衣装をイメージしていた事からも、こうした思いを伝える
ような学び逢い、創りながら互いのイメージを共有できる事を、想像しながら、Podcastを始めてみました。
日本でも、古来からあった、和菓子店、酒造店などの老舗店が100年続くように、ファッションの
デザインを通じて、海外のブランドが、人の創造性を育みながら技術者も育ててきたような、
新しい学び逢いの場所が増えて行くと、嬉しいですね。