
Podcast 山鳩色 編
Podcast 「山鳩色 編」
2021/1/9 「山鳩色 編」を下記にて録音しています。今回の色名は
平安時代、公家(くげ)のみが着用を許された「禁色(きんじき」であり、
天皇の袍(ほう)に使われる色の一つであるとお伝えしました。また、袍とは、
衣冠束帯(いかんそくたい)の時に着る「うえのきぬ」=上着の事である事から
山に住まう、アオバトの青緑色の羽根の色を比喩し、そうした色を表現した事で
付けられた色名であった事から、室内のかすかな明るさでは、薄茶色、太陽光では
緑色が浮き上がる、そんな特殊な色を表現していた。というお話しでしたが、いかが
でしたでしょうか?
こうした色は画像では表現しずらいため、答え合わせには、上記の画像をセレクト
してみました。既に、何度かPodcastを聴いていただいている方は、アイキャッチ
画像が、毎回のテーマとなっている色名の答え合わせであっても、普通の答え合わせ
でない事はご理解いただいていると思います。
そして、今回は、室内と野外、また、太陽光によって、色が変わるという特殊な
染色と織りをイメージ。また、画像内で表現するために、選んだ画像は、木漏れ日が
差し込む木々の情景です。この画像を選んだ理由、判りますか?単純に、太陽の光を浴びた
イメージというわけではありません。この画像のように、木々の中にとまっていた山鳩の
羽根の色が、太陽の光を浴びた時、そうでなかった時を観て、こうした色表現ができない
だろうか?と思ったのでは?という問いと、画像自体も、山鳩は映っていなくても、光が
あたっている葉と、そうでない葉の中間、境界線がまさに、そうした玉虫のような色表現に
なっている事から、セレクトしてみました。
注:上記の参考画像は、画像モニターによって、色の見方は異なります。
Anchor Podcast 「山鳩色 編」
↓
https://anchor.fm/mao.archaichic/episodes/ep-eoo9pp/a-a4ab8pb
そして、今回の「山鳩色」の色の変化についてですが、太陽の光の反射があって、
初めて人は、色を認識する事、また、その素材の凹凸によっても色が変化
するという事からも、単純に染色だけで天皇の「うえのきぬ」が創られたの
だろうか?という問いかけからテーマを決めています。
そして、天皇という高貴な方々に纏っていただく衣服が、贅沢な品となった時期に
創られたのか?または、そうした「うえのきぬ」という上着を創作するには、最高の
技術と知見を献上する事が必要だった背景があるのでは?と言う問いかけから、
プロセスを紐解いていきました。
そして比較する時代として選んだ戦国時代では、戦いに出て行く時の装いとしてふさわしい
工夫がされています。また、実用性にも重きを置いてはいましたが、貿易が活発になって
いくにつれ、海外の繊維品を使い、武将のシンボルとなる織柄を取り入れながら、斬新な
意匠の陣羽織が多数制作されていきました。
そうした歴史を紐解き、対比していくと、庶民の父である天皇が纏う「うえのきぬ」は、
庶民の営みを支える技術を反映させる象徴的なものでなけらばならない。そんな思いが
感じ取れます。特にそうした意志表示が明確に出る、戦国時代の衣装が、斬新で色鮮やかな
輸入素材に移行していった歴史をたどる事で、統治する側の方々の潜在意識や、表現したい、
するべき、自己表現の意図も見えてきます。
泰平の世の象徴である天皇制で統治されていた時代では、庶民の技術を反映する
「うえぎぬ」で、最高の技術と共に、控え目な色彩を纏いながらも、自らの象徴的
存在感を表現し、泰平の世を思う。そうして献上される「うえぎぬ」の技術は、
庶民のあこがれとなり、自ら技術の発展を願う。そうする事で、庶民でもゆるされた
彩度の異なる「ゆるし色」を使い、商いの土台形成を支援するべき象徴的存在にも
なっていく。
ある意味、階級によって、纏う衣服で識別するという行為は差別的要素ではありますが、
庶民が営む生活下での、素材、技術、環境、ライフスタイルに見合った流通の価値を
明確に示し、経済バランスを取っていた制度でもあるように感じます。
また、色々な歴史を紐解くと、海外からの輸入品で色鮮やかな染色が効果な絹以上に
簡単に染めやすかった木綿が流行した戦国時代~のトレンドは、安価な衣服で色鮮やかな
ファッショナブル製品を庶民にも着こなせてくれた、10年前のファストファッションの
台頭時期にも似ています。
そして、戦国時代の混沌とした時代が終わり、江戸時時代に入った頃、活発に、全国に
広がった寺子屋は、武士や医者、僧侶(そうりょ)などのが、読み書きそろばんの知識を
教えて行った事で、文化の広がりを見せていきます。ファストファッションの時代が、
戦国時代~の時代とリンクしているのであるならば? 今の時代は、江戸時代のように、
庶民の力による学び逢いによって、「山鳩色」のように多様な技術を織り交ぜながら
創作したように、庶民の力による、創意工夫が問われて行く時代になるのかも?しれませんね。